47話if

主人の意に応えるように、ジリジリと降りてくるFTOのコクピットハッチ。如何に鍛えた人間であろうと、機械の力には到底敵わない。軋みを上げる腕は限界を訴えているが、それでもジェオはこの手を離す訳にはいかなかった。「イー、グル…

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希望へ向かう詩譚曲

その”青”は、祝福であると同時に呪いでもあったのかもしれない。  そんなことを思いながら、ジェオは荒れた岩肌を歩いた。セフィーロを覆っていた分厚く暗い雲は嘘のように消え去り、鮮やかな青色が広がって…

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どこにもいかないで

行為の後、イーグルはいつも気を失うように眠ってしまうのが常だった。ジェオはその間にシャワーを浴び、イーグルの身体を清めて着替えさせ、その腕に抱いて共に眠る。  ・・・のだが、今日は違った。  情事の熱冷めやらぬ中、イーグ…

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一緒に帰ろう

未だ薄く黒煙を上げている大地の上で、ジェオはところどころ煤けた白い瓦礫を慎重に取り除きながら、”イーグル”を探し回っていた。 ガラッ、と何処かで硬いものが崩れた音がする。その音に勢いよく顔を上げ、…

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色彩

会ったら言いたい事は山程あった。文句も、愚痴も、恨み言も。何せ百ウン十年ぶんだ。絶対に怒ってやる。 ・・・・・・そのつもりだったのに。 「お疲れ様でした」 懐かしい声に目が覚める。 とうに擦り切れたと思っていた、積もって…

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シガーキス

別段深い理由はなかった。どうせもうすぐ終わるのだからと、当たれる相手がいないから自分に当たるしかない、と無意識に自棄になったのかもしれない。 とにかくイーグルは一度も吸ったことがない煙草を何となく吸ってみようと思い立ち、…

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焼き菓子

「ほれ」 ジェオの部屋のテーブルに並べられた色とりどりの菓子、ついでに添えられた湯気の立つカップ。 たった二人で宴会でも始めるのかという様相に、イーグルは小さく笑った。「本当に全部くれるんですか」 並んだ菓子はジェオが部…

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“その日”が明日来ても

薄暗い寝室に、重たい咳の音だけが響いている。 畳みかけのマントの端がベッドの縁から垂れ下がり、イーグルが咳き込む度、その振動でマントの先端を飾る金属が不規則に床を鳴らした。 ベッドに凭れるように座り込み、口を押さえて咳き…

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それは一度きりの

「イーグル、もうやめとけ」 「んん・・・」  軍人にしては白く、細長い指が琥珀色の瓶に伸ばされるのを、ジェオはやんわりと止めながら、素早く封の切られていない酒瓶を取り上げた。  あ、と小さく声が上がったが聞こえなかったこ…

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煙草

ジジッ・・・と、小さな灯が薄暗い部屋で仄かに揺らめく。 「似合いませんね」  大きく吸い込んだ煙を吐き出していると、懐かしい声が耳に響いて、ジェオはゆっくりと目を開けた。  もうどこにもいない筈の男が、確かに目の前にいて…

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