未だ薄く黒煙を上げている大地の上で、ジェオはところどころ煤けた白い瓦礫を慎重に取り除きながら、”イーグル”を探し回っていた。
ガラッ、と何処かで硬いものが崩れた音がする。その音に勢いよく顔を上げ、ジェオは必死の形相で辺りを見回した。
「イーグル?!」
思わず口にした名前は、しかし二度と応えることはない人のものだ。解っている筈なのに、まだ心の何処かで奇跡を願っている自分がいる。
ジェオは崩落した瓦礫を見遣り、己の滑稽さを吐き捨てるように笑った。
コクピットを直撃した黒いエネルギー球。そこを中心にFTOは爆散した───イーグルを乗せたまま。
(解ってる。解ってるさ)
生きている筈などないことは。
だからせめて、せめて、例え肉片の一部でもいい、連れて帰ってやりたかった。彼が文字通り命を懸けて愛した国に。
「何か・・・何かないのか」
イーグル、と祈るように名を呼びながら、大小様々な破片を掻き分けていると、きらり、と何かが光った。
「───あ」
震える手で、そっと瓦礫の中からそれを拾い上げる。
レンズのような蒼い石が嵌まった、薄い金属のプレート。焼け切れたのだろう、両側から黒い帯の様な布が僅かに伸びている。
イーグルがいつも付けていたヘッドセットだった。
「・・・・・イーグル」
ぽたり、ひび割れた蒼い石に水滴が落ちる。イーグル、と繰り返すジェオの声は濡れて震えていた。
本当にもう、お前はいないのか。
解っていた筈の事実が、どうしようもなく心を抉った。
「・・・・・・帰ろう、イーグル」
一緒に。
無理矢理につくった笑みに応えるように、手の中のそれは陽光を受けて小さく煌めいた。