掌を染める赤に、もう特別な感情は湧かなかった。溢れる咳もそれに阻害される呼吸も、苦しいより鬱陶しさのほうが先に立つ。
(―――まだ、)
続く言葉は再び迫り上がってきた熱に掻き消され、代わりに吐き出されたのは赤い体液だった。きっとこの鮮やかな色に反して、自分はいま青い顔をしているのだろう。
背中をさする大きな手が、自分の名を呼ぶ声が、イーグルを”ここ”に繋ぎ止めている。
まだ大丈夫。
まだ、終われない。
まだ・・・僕は、生きている。
「・・・大丈夫、ですよ」
自分に言い聞かせるように言って顔を上げれば、新緑の瞳と視線が絡む。どこがだ、と窘めるような声には、けれど確かに僅かな安堵が滲んでいて、強がった甲斐は多少あったらしいとイーグルは小さく笑った。
●fin●
以前ツイッターに上げたやつ。全然140字じゃなくて草(自分で言う)