主人の意に応えるように、ジリジリと降りてくるFTOのコクピットハッチ。
如何に鍛えた人間であろうと、機械の力には到底敵わない。軋みを上げる腕は限界を訴えているが、それでもジェオはこの手を離す訳にはいかなかった。
「イー、グル・・・!」
絞り出すようにその名を呼んでも、目の前の琥珀の瞳は悲しげに微笑むだけで、そこに宿る決意は揺るがない。
「イーグル・・・っ!」
止められない。無慈悲に降りてくるハッチも、彼の覚悟も。
イーグルを死に向かわせる全てが、ジェオをも押し潰していくようだった。
「ッ、畜生・・・っ!」
もう抑えきれない。
そう思った瞬間、不意にイーグルがシートから身を乗り出し、ジェオにくちづけた。
唇に濡れた感触。鉄錆の匂いが鼻を掠める。
彼の、零れゆく命の跡が、ジェオの口元を薄く染めた。
「・・・愛しています、ジェオ」
一瞬で離れた唇が、囁くように愛を告げて、彼は笑った。いつもの笑顔に、少しの寂寥を湛えて。
貴方の腕の中で迎える最期を、想像しなかった訳じゃないんです。
それもいいかもしれないと、思った瞬間もあった。
けれど、この別れが逃れようのない痛みを孕むのなら、せめて哀しみ以外のものを遺したい。
貴方が僕を思い出す時、いつか温かいものがその胸を満たしてくれるように。
こんな風に置いていく僕を、それでも忘れないで。
愛していたと、幸せだったと、いつかそう思いながら笑える日が来て欲しい、なんて。
それはあまりにも、
「・・・最後まで、我儘ばかりで、すみませんでした」